真珠腫性中耳炎

真珠腫性中耳炎

真珠腫性中耳炎とは、鼓膜の一部が内側(中耳)に陥凹しておきる中耳炎です(先天性真珠腫の場合は鼓膜に関係なく中耳に存在します)。
腫という字があるので、腫瘍と間違えられやすいのですが、腫瘍ではありません。
鼓膜の表面は外耳道の皮膚と連続していますので、角化物(垢)が出ます。正常な場合、その垢は皮膚の自浄作用により外側に耳垢として排泄されますが、鼓膜が陥凹するとその内側に角化物が溜まりやすくなります。
この角化堆積物が、細菌や真菌の培地となり感染、炎症がおこります。この炎症により、周囲の骨を破壊しながら増大するとされています。

症状

症状中耳には大事な器官がたくさんあります。
耳小骨(音を伝える小さな骨)や蝸牛(音を電気信号に変える器官)が壊されれば、難聴になります。
特に蝸牛の機能の低下を手術で直すことは現在のところ不可能です。
また、半規管(平衡感覚をつかさどる器官)が破壊されると、めまいが起こります。
中耳には、顔面神経が走行していますので、真珠腫によって顔が曲がってしまうこともあります。また、炎症によってくさい臭いのする耳だれが、よく出るようになります。

治療

基本的には、手術による真珠腫除去です。
鼓膜の陥凹が浅い場合には、経過を観察したり、鼻からカテーテルによって空気を送る方法(通気療法)が取られる場合があります。
当院では手術の場合、5~6日間の入院で行うことがほとんどです。手術中にめまいが生じる危険がないと思われる症例に対しては、基本的に局所麻酔で行います。
手術時間は、約2~3時間です(病変の程度により変わります)。

真珠腫性中耳炎と鼻すすりの関係について

H16年より東北大学耳鼻咽喉・頭頚部外科との共同研究にて、真珠腫性中耳炎と鼻すすりの関連について調査しました。
真珠腫性中耳炎の多くは鼓膜の陥凹によって発生しますが、鼻すすりの癖を持っている人は、そうでない人の約10倍の確率で鼓膜が陥凹するとの結果が出ました。これは、鼻すすり癖が真珠腫性中耳炎の一因となっている可能性を示唆するものです。
鼻すすりはやはり鼓膜には良い影響を与えないようです。

手術方法

鼓室形成術

鼓室形成術とは、鼓室や乳突蜂巣に病変がある場合や耳小骨に異常がある場合に適応される手術で、鼓膜に穿孔がある場合には鼓膜も再建します。
鼓室形成術は耳小骨の連鎖形態によって分類されます(日本耳科学会)。ここでは、一般的に多く用いられる型を呈示します。

鼓室形成術Ⅰ型

・鼓室形成術Ⅰ型鼓室または乳突蜂巣内の病巣の除去は行いますが、耳小骨連鎖に処置を加えないものを呼びます。基本的に耳小骨の離断や可動性低下等の異常が認められない場合に適応となります。
鼓膜の振動は正常のときと同様に、ツチ骨→キヌタ骨→アブミ骨と伝わり内耳に伝達される。

鼓室形成術Ⅲ型

・鼓室形成術Ⅲ型アブミ骨に異常がなく、ツチ骨やキヌタ骨に離断や破壊、可動性低下等の異常があり、これらを摘出した場合、アブミ骨に直接鼓膜を接着させます。一般的には鼓膜とアブミ骨にある程度の距離があるので、その間にコルメラと呼ばれる振動を伝えるものを留置します。コルメラの材料には、自家組織(自分の組織)である摘出耳小骨や外耳孔周囲の軟骨、または人工材料であるセラミックやチタンを使用します。

鼓膜の振動は正常と異なり、コルメラを介してアブミ骨に直接伝わる。

鼓室形成術Ⅳ型

・鼓室形成術Ⅳ型アブミ骨は底板と上部構造の二つの構造から構成されますが、上部構造が破壊された場合には底板のみとなってしまいます。ここに上述のコルメラを留置し鼓膜を接着した型が鼓室形成術Ⅳ型です。

鼓膜の振動はコルメラを介しアブミ骨底板へ伝達される。

※一般的に術後の聴力改善度はⅠ型>Ⅲ型>Ⅳ型の順で小さくなります。

乳様突起削開術

乳様突起削開術耳の後ろの骨の中は蜂の巣状の空間になっています。これを乳突蜂巣といい、鼓膜の奥の空間である鼓室と繋がっています。乳突蜂巣に炎症があったり真珠腫が進展している場合には、その病巣を除去するために乳突蜂巣の骨を削る必要が出てくることがあります。

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