滲出性中耳炎
滲出性中耳炎とは、耳管(耳と鼻の奥をつないでいる管)の機能不全や副鼻腔炎(蓄膿症)、アデノイド増殖症といった鼻の病気が原因で、鼓室(鼓膜の奥の空間)に滲出液が持続的にたまる病気です。
症状
急性中耳炎と異なり痛みはほとんどなく、多くは軽度の難聴や違和感、耳閉感をともないます(無症状の場合もあります)。
幼児期、学童期前半までの子供に多く、10歳を過ぎるとたいてい自然に軽快しますが、放置しておくと鼓膜が薄くなり、鼓室の壁と癒着してしまう癒着性中耳炎や、鼓膜が鼓室の奥に陥凹してできる真珠腫性中耳炎になる危険があります。
治療
内服薬では抗生剤(マクロライド系が多い)や粘液調整剤の投与が一般的です。
また、耳管から鼓室に空気を送る通気療法もよく行われます。保存的な治療でよくならない場合には、鼓膜を切開し貯留液を吸引除去する方法も取られます。
何度切開しても貯留液がたまる場合には、鼓膜に換気用のチューブを留置※する場合もあります(下図)。副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎、アデノイド増殖症が原因と考えられる場合には、それらの治療も並行して行います。
※鼓膜換気チューブ留置術について詳しくはこちら!
滲出性中耳炎
換気チューブ留置後
3歳児健診について
仙台市では難聴のスクリーニングのために3歳児健診を実施しています。
難聴を疑わせる症状の有無を質問票で確認し、鼓膜の動きの検査(ティンパノグラム)を施行します。
その結果を耳鼻咽喉科医がみて、精査の要否を判定します。
手術方法
鼓膜切開(外来手術)
通常、耳管では中耳の換気が行われています。しかし、中耳炎を起こしている時には耳管の機能もうまく働かなくなっています。鼓膜切開を行うと、中耳の中の膿が減り、さらに鼓膜切開によって通った穴から中耳の中の換気が行われます。この中耳の換気が十分に行われることが中耳炎の治癒に重要な働きをします。
鼓膜切開の穴は、通常では数日~1週間程度で閉じてしまいます。穴が閉じて、中耳炎も治れば治療終了です。しかし、乳幼児や低年齢のお子さんの場合、穴が閉じると、再び中耳炎が悪化してしまうこともあります。
鼓膜切開を行っても中耳炎がなかなか完治しない場合や、一旦治っても度々再発を繰り返すという場合には、鼓膜に換気チューブを留置する方法が有効です。
鼓膜換気チューブ挿入術
鼓膜換気チューブ挿入術では、鼓膜を切開した後、数mmの大きさのチューブを穴に差し込みます。チューブ留置手術は通常、外来で局所麻酔下に行うことができますが、処置に対する恐怖感の強いお子さんなどの場合、安全のために入院した上で、全身麻酔下で行っていただくこともあります。この際の入院は、通常一泊二日程度です。
チューブが留置されていると、チューブの穴を通して中耳の換気ができるので、中耳炎が治ってきます。その中耳炎が治った状態を長く保たせることと、その間の身体の発育によって、耳管の機能も徐々に改善してくることが期待できます。
チューブが留置された状態でも、聞こえ方には大きな影響は無くむしろ中耳炎で中耳に滲出液などが溜まっている状態よりも聴力は良いことがほとんどです。
チューブ留置中は、耳に水が入らないように注意してください。耳栓をすれば、通常の水泳は可能ですが、深く潜水するような行為は避けましょう。入浴はさほど問題ありませんが、洗髪時など耳に水が入りやすい場合は、綿花などで栓をしておくと良いでしょう。
チューブを外すタイミングは、通常2年以内といわれていますが、中耳の状態や年齢によって異なります。チューブを外すと、鼓膜にあいた穴は徐々に閉じてきますが、稀に穴が閉じずに残ってしまう場合もあります。穴が残ってしまった場合は、比較的簡単な手術で鼓膜の穴を閉じることができます。