AAO-HNSF 2012
毎年恒例となりつつあるアメリカ耳鼻咽喉科学会(AAO-HNSF)での教育講演のために、首都ワシントンDCへ兵庫医科大学の阪上雅史教授とともに行ってきました。この学会で教育講演を続けるためには、いろいろな条件が必要です。もちろん講演内容においては、新しい知見と良好な成績を示さなければなりません。また一つの教育講演を聴取するためには日本円にして5000円以上のお金がかかるため、聴取された先生方の好評がなければ次回の発表は難しくなります。ですから、我々の鼓膜形成術接着法に関する教育講演が過去6年継続できていることは、内容やプレゼンにある程度アメリカの耳鼻咽喉科医師から良い評価を得ていると考えて差し支えないと思われます。さらに、本学会でアメリカの先生が接着法の発表演題を出すくらいまでに、この方法を浸透させることができればと考えています。
講演終了直後。右が阪上雅史教授、左が当院副院長。
(平成24年9月11日12:30~13:30(現地時間)、ワシントンDCにて)
第9回国際真珠腫および耳科手術学会 9th International Congress on Cholesteatoma and Ear Surgery
国際真珠腫学会は4年に一度開催される国際学会で、各国が持ち回りで主催します。真珠腫性中耳炎に限らず、中耳~頭蓋底手術全般も対象とした学会になっています。今年は、長崎大学の高橋晴雄教授が会長を務め、長崎市のブリックホールで開催されました。
鼓膜形成術接着法に関しては、これまでも本会のインストラクションコースで院長が何回か発表してきましたし、前回は兵庫医科大学の阪上雅史教授と副院長が共同で発表しましたが、今回は副院長が一人で50分のコースを発表しました。最初の発表から16年が経ち、もちろん原法は変わりませんが、少しずつ改良された部分もあり、また鼓室形成術への応用も加わっている内容です。ただフィブリン糊が他国(特に発展途上国)では手に入りにくく(保険の関係もあります)、世界への普及を妨げている原因の一つと考えられます。組織同士を接着する安全で安価な材料の開発が望まれるところです。
学会参加証明書
花粉症シーズン
今年も花粉症のシーズンがやってきました。昨年は東日本大震災もあり、花粉症どころの騒ぎではなかったのですが、記録的な大量飛散数だったようです。今年の予想では、例年程度とのことですが、もうすでにちらほら症状を訴える患者さまの受診数が増えてきております。
仙台の本格飛散日は3月初旬ですが、本格飛散の前から、抗アレルギー剤の内服を継続していると症状が軽減する傾向があるようですので、早めの受診をお勧めいたします。また本格的な飛散時期には、外来も大変混み合い待ち時間も長くなってしまい、患者さまには大変ご迷惑をおかけすることになり、本当に申し訳ありません。特に土曜日の午前中10時以降では、1時間30分以上もお待ちになってしまうこともありますので、花粉症の患者さまにおかれましてはできるだけ平日に受診していただき、混雑緩和にご協力賜れば幸いです。なにとぞよろしくお願い申し上げます。
第21回日本耳科学会総会学術講演会参加
日本耳科学会は、耳鼻咽喉科の中で耳の疾患に特化して診療、研究されている先生方が発表や議論をする学会です。日本耳鼻咽喉科学会の分科会としては最大規模の学会で、年に1回、各大学が持ち回りで開催担当を務めます。今年は東北大学が担当となり仙台で開催予定でありましたが、3月11日の東日本大震災の影響で止む無く沖縄の宜野湾市での開催となりました。しかしながら、今学会での応募演題数は過去最大を記録し、震災の影響を感じさせない充実した熱気あふれる会となりました。当院からは、慢性中耳炎に対する鼓室形成術の術後聴力成績について発表いたしました。鼓室形成術の術後聴力は、耳小骨の状態により左右され、すべてが成功となるわけではありませんが、全体的には89.8%と約9割が成功例となっております(日本耳科学会聴力判定基準による)。非成功であった残りの1割の患者さまの聴力をいかにして改善させていくか、今後の解決すべき課題はまだまだ存在します。
将監小学校就学児健診
学校医の重要な仕事の一つとして、健康診断があります。管理校医の先生を中心に教師の先生方やPTAの親御さんたちと協力しながら子供たちの健康維持増進を図っています。今回は、来年度に将監小学校に入学予定のお子さんたちの健診を行いました。当院がある将監団地には、小学校3校、中学校2校の計5校の学校ありますが、その内将監小学校と将監西小学校は、震災による校舎の破損がひどく、子供たちはそれぞれ将監中央小学校および桂小学校(隣接する団地)の校舎を共同で使用しておりました。最近の少子化の影響で児童数は少ないとはいえ、やはり一つの校舎を2校分の児童で共有するのは大変で、一つの教室をパーティションで半分に区切って2クラスが使用したり、家庭科室などを使用したりして何とかやりくりしていたようです。今回将監小学校では、やっと自校の校庭にプレハブの仮設校舎が完成、今月からその仮校舎での授業が始まっております。仮校舎とはいえ、やはり自分の校舎で勉強したり遊んだりできることで、子供たちも生き生きしているように見えました。
がんばれ、将監小!がんばれ、将監西小!
校庭に建てられた将監小学校仮設校舎。
AAO-HNSF 2011
今年もまたアメリカ耳鼻咽喉科学会(AAO-HSNF)に出席しました。今回は西海岸のサンフランシスコでの開催でした。日本からのアクセスがしやすい場所ということもあり、本会に参加された日本人の先生方もいつもより多かったようです。例年通り兵庫医科大学の阪上雅史教授とともに、院長の発案した鼓膜形成術接着法とその応用を教育公演という形で発表させていただきました。
この学会での教育公演は、その内容に対する審査が一般の口演よりもさらに厳しく、それにもかかわらず 2007年の初回から数えて 5 回の発表を継続できた要因は、やはり本法のオリジナリティとそして阪上教授のプレゼン、経歴のよるものが大きいと考えられます。そして多少なりともこのプレゼンにかかわることができることは、私にとって本当に有意義なことだと感じています。学会期間中は外来時間も不規則になり、患者さまにはご迷惑をおかけしますが、医療の発展には不可欠なことでもあるゆえ、なにとぞご了承いただきますようよろしくお願いします。
講演終了直後。左が阪上雅史教授、右が当院副院長。
(平成23年9月12日15:00~16:00(現地時間)、サンフランシスコにて)
チリから参加された先生(右端)からの質問もあった。
アメリカの学会であるが、諸外国からの参加者が多数ある学会でもある。
第8回耳鼻咽喉科短期滞在手術研究会
耳鼻咽喉科領域での短期滞在を目指す手術をテーマとした耳鼻咽喉科短期滞在手術研究会ですが、今年で第8回となりました。今年は、こやま耳鼻咽喉科院長の小山悟先生が会長となり、東京での開催となりました。
今回のシンポジウムでは、短期滞在手術における局所麻酔方法の実際と題し、耳鼻咽喉科各領域での局所麻酔方法の詳細について、発表が行われました。耳科領域では、東京女子医大東医療センター教授須納瀬弘先生の後に、当院で行われている中耳手術での局所麻酔方法について発表しました。前々回の時にも述べましたが、耳科手術に関しては、欧米ではもはや日帰りまたは短期滞在が推奨される手術になっているようです。退院後に発生する出血、めまい等の問題に対応するシステムを構築することにより、短期滞在による手術が可能であることが証明されております。現在の日本の医療体制に対して、このような研究会からの情報発信により変革を期待したいものです。
第112回日本耳鼻咽喉科学会総会学術講演会参加
去る5月19日から22日の3日間、京都で行われた第112回日本耳鼻咽喉科学会総会に参加、一般口演による発表をしました。今回は、真珠腫性中耳炎で破壊された半規管(バランスを調節する器官)を有する症例についての演題でした。全国学会は、各地で活躍されている諸先生方と、学術的な話だけでなくお互いの近況をお伝えする場でもあります。今回は、東日本大震災後初めての全国学会ということもあり、温かい励ましのお言葉を多数いただいております。学会自体の開催も危ぶまれましたが、会長のご英断で盛況に行われました。
期間中、外来診療変更等ご迷惑をおかけしますが、ご理解いただきたくお願い申しあげます。
被災地診療4
震災から2カ月以上が経過しました。復興という言葉が、少しずつ具体的に前向きにとらえられ始めております。
昨日も前回に引き続き雄勝地域の巡回診療を行いました。今回は、みみはなのど富沢クリニックの中野浩先生とご一緒に看護師、薬剤師を含め計4名で診療しました。
雄勝地域も、がれきの整理が少しずつ進んでいるように見え、また数日前から地域全般に電気がやっと通ったようです。しかし、水道はいまだ復旧せず給水車が頼りの状況です。
当地域には雄勝病院がありましたが、津波により壊滅的な打撃を受けました。その雄勝病院に勤務されていた地元出身の看護師の方が避難所で献身的に働いており、避難所の方々の健康管理に尽力されております。今後は避難所から仮設住宅へ生活の場が徐々に移っていきます。それに伴い、仮設住宅地域の医療体制の整備も考えなければなりません。
時間の経過とともに状況は変わってきており、その変化に対し適切な対応が望まれるところです。
巡回診療車内での診療
中野医師の診察
被災地診療3
震災からもうすぐ2カ月が経とうとしております。各地で復興の兆しが見え始めており、仙台市周辺の避難所で生活している方々は、近隣の医院へ通院することができるようになってきています。しかし沿岸部は電気、水道といったインフラもまだ復旧していないところがあり、前回視察した雄勝地域の避難所でもいまだ高圧電源車や給水車の臨時供給でなんとか凌いでいる状態の場所もあります。
今回は、宮城県耳鼻咽喉科医会会長の神林潤一先生を始め、池田クリニックの綿谷秀弥先生、台原駅前耳鼻いんこう科の千葉敏彦先生と共に、5月5日のこどもの日に雄勝地域の巡回診療を行いました。雄勝地域では小規模の避難所が点在しており、1か所の避難所に集まることが困難であるため当院の巡回診療車の機動性が発揮された一日でした。
少なくとも5月中は、このような被災地での避難所診療を継続し、巡回診療のニーズに合わせて今後の方針を決定する予定です。
巡回診療車を使用した避難所での診療